人手不足がより一層深刻化。2022年は「多様な働き方」に取り組む時代に。
Afterコロナは、コロナ前でも起きていた人手不足、特に専門職に関して、より一層深刻化します。若年層の人口そのものが減少していることが一番の要因である為、解決はしません。既に求人時の賃金は高騰していますが、賃金条件で勝ち抜くのは、ごく一部の事業所を除き難しいでしょう。ただ、今の労働者は、賃金以上にワークライフバランスと呼ばれる労働時間や、有給の取得しやすさ、働き易さ等を重視する傾向があります。「医療機関だから」といった固定概念を外し、「多様な働き方」に取り組むことが必要です。
そうした院内を円滑に運用する為の就業規則の作成・提出代行、労使トラブルの問題解決を行うのが社会保険労務士です。社労士は、社会保険労務士法に基づいた国家資格者であり、経営を続けていく上で必要な労務管理、助成金の相談や申請、入社・退職・出産の為の育児休業、さまざまな手続きや給与計算など多岐に渡って業務を行っています。
2020年から続くコロナ禍の振り返りを含め、2022年は経営問題を見直す絶好の機会でもあります。多くの社労士事務所では、顧問契約ではなくスポットでの依頼も可能ですので、ご依頼を検討している社労士事務所へ一度お問い合わせください。
金額の規模や申請審査の難易度、申請代行者などが違います
補助金と助成金の違い
補助金と助成金は返済不要という点では同じですが、次のような違いがあります。
補助金とは、主に国や地方自治体が新規事業や、創業促進、さまざまな国策・施策を促進するための手段の一つとして実施して、経済産業省が管轄しているケースが多いです。
助成金と比べると、①補助される額が大きい(数千万~数億)②申請が通る可能性が低い(採択率30~60%程度)③申請代行は中小企業診断士や行政書士が多い といった特徴があります。
一方、助成金の多くは、厚生労働省が雇用の安定や生産性の向上、人材育成のために実施しています。補助金と比較すると①助成される額が小さい(数十万~数百万)②申請条件を満たせば、ほぼ支給される③厚生労働省系助成金の申請代行は社会保険労務士の独占業務といった特徴があります。
Q1. 助成金の探し方を教えてください/H歯科クリニック(長野県)
一覧を確認する場合は「令和〇年度 雇用・労働分野の助成金」とWebでご検索ください。厚生労働省管轄の事由毎にまとめている助成金リーフレットを確認することが可能です。また顧問社労士や助成金に強い社労士の方がいれば、今後取り組もうとされる事案(採用・生産性の上がる機器の購入、育休や介護休業を取得するスタッフが出る等)に応じて、申請が出来る助成金が無いかを確認頂く方法もおすすめです。
Q2. 2022年度の助成金見込みを教えてください/S歯科医院(岐阜県)
見込みではありますが、以下の情報が一部確認されています。本決定は厚生労働省の発表をお待ちください。
●キャリアアップ助成金
パートの有期から無期転換コース(2022年4月廃止予定)
●両立支援等助成金
出生時両立支援コース「子育てパパ支援助成金」(2022年4月改正予定)取得時助成額減額・育休取得率条件達成時助成新設
●働き方改革推進助成金
労働時間短縮・年休促進支援コース(2022年4月存続予定)
雇用環境・均等局「令和4年度予算概算要求における重点要求(参考資料)」
https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/000847351.pdf
Q3. 助成金診断ツールは活用すべきでしょうか?/M歯科医院(埼玉県)
精度が高いものを見たことがないので、有料のものはおすすめしていません。助成金や補助金名が羅列されたとしても、全てが申請出来るとは限らず、むしろ申請条件を満たさないといった事や募集期間を過ぎているケースの方が多いと感じています。ただ、上記を承知の上で、社会保険労務士や補助金申請を作成してくれる中小企業診断士等に「こんな助成金、補助金は使えるのか」とお問い合わせに活用頂くのは『有り』だと考えます。
Q4. 労働保険・社会保険上、常勤を確保するのと、非常勤のパートを複数雇用するのでは、どちらが有利なのでしょうか?/T歯科医院(神奈川県)
経営する上で、何を重視されるかで変わります。労働保険はほぼ影響ないので、割愛します。社会保険料(協会けんぽ・厚生年金)に関しては、50%を事業所側で負担が必要な為、ここをどう見るかですね。常勤を増やせば、デメリットとして経費増。一方、メリットとして夕方以降や土日等、パートの方が入りにくい時間に配置して診療の人員体制は整いやすくなります。また、責任感や成長意欲もパートの方より高いですね。パート側からみるとメリット・デメリットは反転します。有給や緊急時(急な人員不足)を考えると、バランスよく配置することが望ましいと考えます。
Q5. 2022年4月からパワハラ防止法がすべての雇用主に適用されると聞いたのですが…/I歯科医院(愛知県)
2022年から中小企業もパワハラ防止法(正式名称:改正労働施策総合推進法)が適用されます。罰則は設けられていませんが、事業所側には「安全配慮義務」がありますので「パワハラが行われていることを知りつつ放置していた」ということになれば、民法上の不法行為責任に問われる可能性もあります。日本ファンド(パワハラ)事件として有名なのは、上司が部下に対して「扇風機で継続的に風を当て続ける」「事情聴取や弁明無しに始末書を出させる」「会議での大声での叱責」「足の裏で膝を蹴る」「暴言」が原因での抑うつ状態の発症は、上司及び企業側の責任と認め、100万円以上の賠償を命じた事件もありますので、対策をご検討下さい。
社会保険労務士の探し方、選び方
最後に
医療等の専門分野に強い社労士の探し方は、医療系ディーラーの方に確認頂ければ、評判を聞けたり、紹介を頂けると思います。実際に社労士とご面談された時、「医科・歯科の顧問先は何件ありますか?」と確認されてもいいでしょう。開業時に1点注意頂きたいのは、価格のみで選ばないことです。サービスの量は価格と正比例する場合が多いので、低額でもご自身が官公署へ出向く時間や書類作成の時間コストが発生する場合、きちんとした顧問であれば防げたはずの労使トラブルが起きて医院経営に甚大なリスクをもたらすこともあります。開業に向けては、準備期間が通常何年かあるかと思います。ディーラーやお知り合いのご紹介、社労士の情報発信などを確認して、選んでいきましょう。