感染対策だけじゃない!日々のセルフメンテナンスは医院経費も削減
良いセルフメンテナンスはハンドピースの寿命を伸ばし、ランニングコストを抑えることができます。ハンドピースは高速回転し、使用頻度も高いので性能の劣化や故障は免れないですが、日々のセルフメンテナンスを確実に行うことで長期の使用に耐えられます。欧米では全歯科医院経費の約10%がハンドピース関連だという統計があるように、ハンドピース関連のランニングコストは、歯科医院の経営に直結します。ハンドピースのセルフメンテナンスは大きく分けて次の3点の目的があります。
異物の除去
ハンドピース内やチャック内に入り込んだ血液や唾液などの異物を除去します。特に、ハンドピース内部にタンパク質が付着した状態で滅菌すると、加熱により凝固し、ボールベアリングやギアなどに入り込んで故障の原因となります。衛生的にも内部構造の保護のためにも重要です。
ギアやベアリングの潤滑
ハンドピースを安全に高速回転させるためには潤滑油が必要です。自動車のエンジンオイルと同じで、ボールベアリングやギアの接触表面に潤滑油膜を形成し、接触面を直接接触から保護することが目的です。また、一度施術に使用すると潤滑油が飛んでしまうので、使用の度に再注油します。
ハンドピース修理の約半分は不完全な潤滑が原因です。ボールベアリングは潤滑オイルがない状態で高速回転させると、ほとんど瞬間的に焼付を起こします。一度焼付を起こしたベアリングは交換するより他に方法がありません。
滅菌
滅菌工程は、次の患者さんに安全に使用できるように、すべての微生物を殺滅する工程です。ハンドピースの劣化を防ぐためには、乾燥工程を含め135℃を超える滅菌プロセスは使用しないほうが良いです。また中空負荷製品に分類されるハンドピースの滅菌には、クラスBやクラスSの滅菌器を使用する等、滅菌保証が取れた手順で滅菌をする必要があります。
ここが大切!ハンドピースを長持ちさせるポイント
ポイント1 注油はヘッドから黒い汚れが出なくなるまで十分に
注油には「ハンドピース内に入り込んだ血液や唾液などの汚れを外部に除去する」という目的があります。ここでしっかりと汚れが除去されないと、オートクレーブをかけたときに高熱により汚れが凝固し、故障の原因になります。ヘッドから出てきたオイルが黒い場合、ヘッドから出てくるオイルが透明になるまで繰り返して注油してください。また注油されたオイルはオートクレーブの高熱である程度蒸発してしまうので、ハンドピースを使用するまで潤滑油を蓄えておくためにも、オートクレーブ前には十分に注油する必要があります。
ポイント2 週に一度はチャックの洗浄を
チャック内に汚れがたまると、チャックをすり減らし、バーの把持力が低下する原因になります。スプレーオイルをチャックに直接注油したあと、歯間ブラシ等でチャック内部から汚れを掻き出してください。
ポイント3 異常を感じたらプロによる検査・メンテナンス
ギアやベアリングが劣化すると、軸ブレや発熱が生じます。こういった回転異常がある状態で使用を続けると、けが・やけどの原因になり危険です。また軽度の異常は、交換部品のコストも安くなる場合が多いので、異常を感じたら早めにプロによるメンテナンスをおすすめします。