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第3回 歯髄幹細胞は歯髄に欠かせない細胞

第3回 歯髄幹細胞は歯髄に欠かせない細胞

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本田 雅規 本田 雅規
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歯髄幹細胞移植による歯髄再生は可能 後編

前回のコラムでは、直接覆罩法において、どのようにデンチンブリッジが出来るのかについてお話をしました。今回は歯髄再生の話をしましょう。
今でもあると思いますが、当時、直接覆罩材の治療法には限界がありました。例えば、露髄した面積が大きければ抜髄です。どうして、欠損が大きいとデンチンブリッジはできないのでしょうか。感染していることも理由にありますが、象牙質の欠損が大きい場合には、直接覆罩材だけでは象牙質橋の形成が困難でしょう。
では、この理由を考えてみましょう。象牙質橋を形成する細胞は象牙芽細胞ですから、象牙質橋の形成量に限界があるということは、象牙芽細胞の数が足りないのではないでしょうか。象牙芽細胞を作り出す細胞は歯髄幹細胞ですから、象牙芽細胞の数を決めているのは歯髄幹細胞です。つまり、歯髄幹細胞から供給される象牙芽細胞の数に限界があり、結果的に象牙質の形成量が少なくなることが原因と考えられます。
何か良い方法はないでしょうか。象牙芽細胞に分化する歯髄幹細胞は入手可能ですから、象牙芽細胞が足りない部位に、歯髄幹細胞(図1)を補充(移植)すれば良いのでは、という考えから、歯髄の細胞を直接覆罩剤とした実験を紹介します。
犬の臼歯をバーで削合して人工的に露髄させます。細胞は、同じ犬の歯髄から歯髄細胞を単離して、培養という技術を使って、移植に必要な数だけ増やします。増やした細胞をβTCPに播種して、その複合体を露髄した部位に充填後、レジンで封鎖して観察しました。対照群はβTCPだけを充填しました。対照群では、象牙細管や象牙芽細胞は観察されませんでしたが、複合体を移植後6週にてデンチンブリッジが観察され(図2)、組織像においても両側の歯根がデンチンブリッジによって繋がっていることがわかります(図3)。
これらの結果から、歯髄幹細胞を移植するとデンチンブリッジが誘導されることが分かりました。将来、より大きな欠損を伴う露髄でも、直接覆罩材の代わりに歯髄細胞をその欠損部に投与することで歯髄が温存できると考えています。実際に、この治療を行うにはどれぐらいの費用がかかるでしょうか。治療法の開発も必要ですが、治療費についても考える必要があります。現在、幹細胞を移植用に調整する費用は、まだまだ開発初期の段階ですので高額だからです。
今回のコラムで歯髄の再生に興味をもっていただけましたでしょうか。次回は、歯髄の全体を再生させる治療についてお話しします。
本田 雅規
愛知学院大学歯学部・口腔解剖学講座・主任教授・歯科医師・医学博士・セルテクノロジー学術顧問
ボストンにあるフォーサイス研究所にて、世界で初めて歯の再生に成功してから現在まで継続中。愛知学院大に移ってからは、トランスレーショナルリサーチの実現も目指し、臨床系講座と協力しながら歯科領域における細胞治療を開発中。
1989年 愛知学院大学歯学部卒業
1993年 名古屋大学医学部口腔外科学講座・医員/2000年~2001年 ハーバード大学・フォーサイス研究所・客員研究員
2003年~2007年 東京大学医科学研究所・幹細胞組織医工学・助手・助教
2008年~2014年 日本大学歯学部・解剖学第2講座・講師・准教授
2015年~現在 愛知学院大学歯学部・口腔解剖学講座・教授

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