日々臨床をおこなっていて、患者さんの主訴として「違和感がある」程度の歯でも、実際に診査をおこなってみると深い歯周ポケットが存在し、レントゲンでは歯根を大きく取り囲む透過像があり、動揺もあり、保存に悩む、こんな経験は無いだろうか。私のパートでは、エンドの問題と、ペリオの問題を持つ、いわゆる混合型の抜歯基準について少し考えたい。これは、抜歯か保存かを考察しているある文献からのチャートである。(●図1)病変を有する歯を診断する時に、正確な診査診断によって治療計画、予後判定がなされることは重要である。ただ、これを見ると患者さん側の問題としても、経済的な理由や患者の意思、コンプライアンスといった様々な複合的な要因が抜歯の基準に影響を及ぼすことがわかる。
その上で治療計画に則って歯内療法、歯周治療を行っていく。原因は治療の結果よりわかることも少なくなく、時にはブラックボックスに手を入れながらの感覚で治療をおこなう、と感じることもある。
よって、私たち一般歯科医にとってはエンドペリオ病変とは次のように言い換えることができるのではないだろうか。
「エンドやペリオの問題からX線的に大きな透過像を有し、ときには深い歯周ポケットや動揺を認め、治療計画に迷うが、患者さんにはそれほど症状がなく、時には患者さんが保存を希望する病変。」予後判定において抜歯となってしまう歯でも、実際の臨床においては保存に努めることになることが出てくることもこの病変の治療に取り組む難しさであると感じる。
私たちは2019年にエンドペリオ病変に特化した書籍を出版させていただいた。これは日々、我々のクリニックに訪れる患者さんのこの病変について、どのように取り組んでいこうかといった問題提起の意味もある。
またSNSを利用し、世界各国のドクターとコミュニケーションをとり、この問題について様々な視点でディスカッションをおこない始めている。各国の背景の違いからうまれる意思決定の違いや術式の違いは興味深いものがある。ご興味のある方は、ぜひともTeam Endo-perioのFacebookにアクセスしていただき、この病変について一緒に考えることができれば幸いである。次回は具体的にどのように私たちが意思決定をし、治療にあたっているかを述べたい。