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エンドペリオ病変の治療戦略が見えてくる ホープレスの歯に立ち向かう 第5回

エンドペリオ病変の治療戦略が見えてくる ホープレスの歯に立ち向かう 第5回

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篠田 和明 篠田 和明
更新日:

歯内歯周病変のような複合的な疾患においては、歯内病変由来のものであれば歯内療法で完結する場合もあるが、その後歯周治療に移行し、治療の長期化が予想されるもの、予知性の有無が曖昧なもの、患者さんのモチベーションの低下がみられるようになるものなど、様々な問題に自分の判断が正しかったのかどうか迷うケースに遭遇することも少なくない。

日頃私は、いかに患者さんにその疾患について正しく伝えられるか?ということを大切に考えている。卒後間もない時は、X線で根尖部付近にみられる透過像に対して、患者さんが治療を希望されれば、とりあえず根管治療をおこないましょう、と根管治療等をおこない、それがうまくいった?(症状が出てないだけ?)こともあったり、また一方で、何年後かに自分が治療をおこなった部位が腫れたり痛みを訴えられて再来院された患者さんもいた。
私は自分の知識や経験のなさをなんとかしたいと、週末には研修会に通い、そこで得た知識を拝借し患者さんに少しでもわかっていただきたいと文献ベースでの説明や、写真・動画等をみていただき、できるだけフェアにお伝えしたいとおこなってきたつもりである。

しかし、このような疾患を持たれ来院される患者さんの中には、インターネット等で知識を得られ、ある種のプロスペクト理論に近いものを持たれ、独自の解釈で我々の説明に対しても解釈されてしまうこともあると感じている。(紙面の関係で詳細は割愛させていただくが、プロスペクト理論とは、不確実な状況下で意思決定を行う際に、事実と異なる認識のゆがみが作用するといった理論であり、利益や損失に関わる意思決定のメカニズムをモデル化した、行動経済学の理論である)。

そこで、患者さんにどのようにすれば正しい診断をよりフェアにお伝えでき、理解していただきながら治療計画を共に考え、一緒に取り組んでいけるかを考えた時に、小学生の時に習った5W1Hが患者さんの話を整理し聴くという傾聴スキルの参考になると感じている。主訴に対して、患者さんご自身でもこの疾患に対する経緯を考えていただき、話を整理することが正しい診断と患者さんの意思決定につながると感じている。
余談になるが、この5W1Hを元にした傾聴のスキルは、思春期の娘を持つ父親として、経験や感情でものを言わず娘の話を傾聴することによって、父娘の関係にも少し役立っていると感じる。
歯科医療の現場でも、保険制度の問題や医療の抱える問題は多様である。私の日頃意識しておこなっていることが、これを読まれた先生方の少しでも参考になれば幸いである。

【参考文献】
医療リテラシー読本 松村むつみ著 翔泳社 2020

篠田 和明
オハナデンタルクリニック(千葉県市川市)院長
昭和大学卒
【所属学会】
日本臨床歯周病学会、日本歯周病学会、日本顕微鏡歯科学会

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