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人材不足の根本理由/前編『「当たり前のルールを 当たり前にすること」から採用は始まる』

人材不足の根本理由/前編『「当たり前のルールを 当たり前にすること」から採用は始まる』

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歯科医院採用に求められる「意識改革と共通言語」の必要性

高度な歯科医療を目指してチームワークを重視した経営を行っている、たかしデンタルクリニックの山田隆史院長。長年にわたり、医院の人材採用についてタッグを組んできたD’S AGENCY代表 池田直史氏と対談。山田院長の改革について伺った。

患者との相性も大切にする人材活用へのこだわり

池田直史氏(以下池田氏) 山田先生と最初にお会いしたのはもう15年程前ですね。当時から山田先生の人材採用に対するこだわりを感じまして、今でも印象に残っています。

山田隆史院長(以下山田院長) 歯科医院にはいろいろな患者さんがいらっしゃるので、プラークコントロールの説明を一つするのでも、患者さんに合わせてスタッフもおとなしくて真面目な感じの方や、ハキハキした活発な方など、いろいろなタイプのスタッフを採用したいと池田さんに相談したことがありましたね。

池田氏 歯科衛生士担当制を採用されて、患者さんとの相性を大切にされていますよね。今、山田先生はスタッフの福利厚生なども全国トップレベルにきっちりと整備されておられます。今は順調ですが、振り返ってみて、人材で壁に当たったと感じたことはありますか?

山田院長 当院は4、5年前に移転して、その当時スタッフは10人未満でした。それが15、6人に増えて、医療法人になった途端、統制をとるのが難しくなり、正直めちゃくちゃになりました。個人経営の職人から、売り上げを伸ばさなければならない会社の経営者に変わったんですね。スタッフに今までない負担がかかるようになり、「そんな話は聞いていない」とか、「急に院長は変わった」などの不満が出て、スタッフの退職が続き、チーフ一人を残してベテランも辞めていきました。なんでだめなんだろうと、かなり落ち込みましたね。

池田氏 厳しい状況でしたね。その頃、水曜定休だったのを予約が取れるようにして、シフト制に変えたら大反発されたこともありましたね。ローテーションにして休みやすい環境にすると院長がおっしゃって、実質の休日数は増え、スタッフにとって一番いい形にしたはずなのに。

山田院長 昔の医院の感覚で、一生懸命話せば分かってくれると思っていた自分の考えが間違っていたんです。スタッフと院長に信頼関係がなかったらどんな良い勤務条件でも一緒。どんな条件よりも一番大事なのは、組織として成り立っているかどうかと、スタッフと医院や院長との信頼関係。それがない限り、何やっても同じだと思います。

ビジョンに共感する人材を求めて、土台から改革

池田氏 人材についてはビジョンを持ってこういう風な医院にしたい、こういう治療をしていきたいということを伝えて、それに対して賛同してくれるスタッフを募るほうがいいと思いますね。

山田院長 当院を組織として改革しようと思ったときがありまして、3年間やってみてダメなら出直そうと腹をくくり、ピラミッドの土台から作り直そうと決意しました。以前と違い、チーフは伝達する存在ではなく、僕の考えを代弁する重要な存在と思うようになりました。長年パートナーとして勤務してくれるチーフたちを大切にしたいし、私に何かあったら、その後の生活まで考えてあげたい。そういう思いは通じます。
チーフの衛生士さんの一人は当院の近くにマンションを購入されました。長く勤める姿勢のスタッフがいてくれるのは、僕の医院に対する覚悟が見えてきたからなのでしょう。やっとここまで来ることができました。

池田氏 医院としての方針を見せて、院長がそれを実行しているかどうかを見てはじめて、理解してもらえるのでしょうね。前に山田先生は、いつでも縮小して奥さんと二人で診療してもいい覚悟ともおっしゃっていました。先生は覚悟ができているからこそ、新しいことにチャレンジできます。勤務するスタッフのことをよく考えているので、僕のアドバイスを聞いていただけるし、何かを実行すると効果もすぐに表れますね。

挨拶、就業規則が意識改革のスタートライン

池田氏 チーフとのコミュニケーションが改善し、信頼関係の土台ができると、スタッフ側の捉え方がプラスになってきましたね。組織としてスタッフたちの意識改革としようと山田先生が思われてから、具体的にはどんなことに取り組んでおられますか?

山田院長 スタッフと院長というのは、雇われている者と雇っている者なので、根本で見てもわかり合うのは難しいとも気が付きました。では、どこを共通項にして信頼関係を作っていくのか。まずは人としての「共通言語」です。挨拶しないことが日常になってしまっていた医院で、きちんと挨拶をしてもらうことから始めました。人から物をもらったら「ありがとう」、おはようと言われたら、「おはよう」と言う。小学生でも習う話ですが、改めてスタッフに伝えました。

池田氏 あと、「就業規則」にも非常に力を入れていますよね。

山田院長 はい、もう一つの見直した共通項です。「就業規則」というのは、院長とスタッフが守るべき共通の約束ごと、つまり社会人としての「共通言語」なんですね。今まではどんぶり勘定でしたが、スタッフにとってそれは不信感を招くことなのです。「就業規則」は勝手に決めるのではなく、スタッフの代表者と院長が話し合って決めるものです。契約事項の内容をお互いがきちんと知っておかないことには、契約として成立しないと実感しました。そこで当院では読み合わせと称し、公民館で机を並べて、スタッフに就業規則を読んでもらいます。初めは「文言も難しいし、全然分からない」という声もありましたが、その難しい言葉にも読み仮名をふって意味も理解してもらえるようにしました。

池田氏 取り組んだ意識改革の成果があって、今、山田先生とスタッフの関係性は非常に良くなりました。「就業規則」というのは経営者側では都合のいいように解釈されがちで、中には記載された規則に、それは現実的に無理というようなことを平気でおっしゃる院長もいます。コンプライアンスの部分も考えていかないと、結局スタッフというのは院長の姿勢を見ているものです。自分からも他院の成功例など山田先生に情報提供してまいりましたが、行き詰ったことがあったらご自分の都合だけで解釈せずに、信頼できる人にアドバイスをもらうことが解決の近道につながると思いますね。

たかしデンタルクリニック 山田隆史院長
北海道大学歯学部卒。大阪大学歯学部大学院にて博士号取得。所属講座/ 歯科補綴学第二教室(主に入れ歯を研究する講座)
平成16 年3 月、神戸市西区「たかし歯科」開院
平成28 年6 月、「たかしデンタルクリニック」として移転リニューアル
チェア9台、ドクター5名(2022 年4月に中途採用で2 名入社)歯科衛生士5名、歯科助手受付5 名の合計15 名のスタッフで運営
小児矯正と得意とし、開院から16 年で約600 症例
D’s AGENCY 代表 池田直史氏
前職にて、歯科業界特化型エージェント(就職サポート)として、10 年のキャリア。歯科衛生士学校、デンタルショーで歯科衛生士のキャリアについての講演実績あり。
1000 名以上の求職者相談、1500 件以上の歯科医院の採用相談を受ける。「歯科業界に正しい就活リテラシーを」という想いから、ディーズエージェンシーを設立。
現在、就職サポート、歯科医院の現役事務長としても活躍。若手歯科医師を応援する会「ニッチの会」メンバー。
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