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令和4年度診療報酬改定の概要がまとまってきました。おそらく今号が発刊される頃には、詳細な点数が決定していることとは思います。その辺りについては、次号第2弾で説明を加えて行きたいと思います。

本改定は、平成30年度医療・介護同時改定の際に目指した「2025年団塊の世代が後期高齢者に入る時期」における安定した医療介護提供体制構築に向けて第8次医療計画前の大事な3回目の改定となるはずでした。しかし残念なことに、前回令和2年度改定後から新型コロナウィルス感染症の拡大が始まり、現在においても終息していない状況が続いております。そのため「新型コロナウィルス感染症等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築」という項目が急遽入り、最優先課題となったのです。ただし、歯科においては感染対策の更なる徹底が求められている程度で、大きな方向性に変化はありません。

「歯科口腔保健の推進」の下、う蝕予防の推進、歯周病の重症化予防に引き続き重点的に取り組んでいくこと、各ライフステージに応じた口腔機能の管理をより幅広い年齢層への対応が望まれており、そのためには、かかりつけ歯科医機能の強化が重要としております。令和2年度保険改定において新たに導入された項目である「長期管理加算(初診日より6ヶ月経過後、月に1回算定(100点、か強診120点))」は、医院に継続的に通院する患者を増やすために導入されました。その算定回数を見ると(図1)、か強診届出施設とそれ以外では3.5倍以上の差があり、歯科訪問診療料に至っては、40倍以上の差があるのがわかります。一方、か強診届施設は、全体68000施設の約10000施設(15%)程度に留まり、ここ1〜2年は増えていません。

どんな要因が「か強診」の届出の障害になっているかを調べたところ「訪問歯科の回数(年間5回)がクリアできない」が一番多い理由でした。そしてそれは「訪問の要望がないから」だそうです。医療側からアクセスする癖がついていない医院においては、ただただ連絡を待つということなのでしょうか。

「P重防」も前回新しく導入された項目です。これは、歯周ポケットには問題がないものの歯肉炎が見られるなど、放置しておけば歯周病が重症化していく可能性のある口腔内を維持管理していくこと目的としております。また、S P T(Ⅰ)、S P T(Ⅱ)も歯周病の程度は異なりますが、ともに重症化を予防するために導入されています。『歯管を算定しつつ、継続的にP重防なりS P Tを算定している=長期管理加算を算定している』と考えられるので、長期管理加算の算定数は、かかりつけ歯科医機能がどこまで活用できているかの指標と言えます。

つまり、か強診以外では「算定数少ない→再初診算定が多い」と予測され、地域の患者は「かかりつけ歯科医を持っていない」ことになります。地域包括ケアシステムという大きな枠組みの中で、「かかりつけ医」は重要な役割を期待されております。逆に捉えれば、「か強診」でなければあまり期待できない、とも読めます。

「歯科医療提供体制等に関する検討会」における「歯科医療機関の機能分化と連携、かかりつけ歯科医の機能」の資料(図2)の中で、①歯科保健医療に係るニーズの多様化により、それぞれの専門性を1人の歯科医師がカバーすることは難しい、②複数の歯科医師が勤務する歯科医院の設置、複数の歯科医院のグループ化が必要ではないか、などが論点にあげられており、今後の歯科医院のあり方は大きく変わっていく可能性があります。

図3にあるように、歯科医院の規模はユニット数4台以下が大半となっており、それぞれの医院が、国が目指す「かかりつけ歯科医」となることは現実的には難しく、女性歯科医師の増加に伴う働き方の多様性への対応も考えると、大型化、グループ化の推進は避けられない方向と見えます。

保険制度は、医療提供体制のあり様をある意味示しております。我々歯科医院の経営者が、その点を十分に理解し、保険改定に望むべきと考えます。次号では、保険改定について具体的に解説を加えていきたいと思います。

康本 征史
日本歯科イノベーション協会(JDI) 会長
柏の葉総合歯科・小児歯科 院長
1994年康本歯科クリニック開業。2000年予防歯科センターを増設し、定期管理型歯科医院として業績を伸ばす。各地域での講演会だけでなく、21世紀の歯科医院経営の追求を目的とした「康本塾」「次代塾」を主宰する等、精力的に活動中。

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