Endoで自費治療のクリニックを成功させるにはどうすればいいでしょうか」。懇親会で先生方によく聞かれる質問です。これに対し、私はいつも「先生の技術はもちろんのこと、『優秀な』スタッフ、院内の環境づくり、そして客層が大事です」とお答えしています。そしてこの中で先生の技術と並んで最も重要であり、他の要素にダイレクトにつながるのが「スタッフ」です。
診療室で先生自らが治療費の金額を絡めつつ治療内容を説明すると、患者さんから見ると、どうしても医師が生臭く、いやらしい感じになってしまいます。これを避けるために私は、患者さんに対して一切お金の話をしません。日々「お金のことなんか気にせずにひたすら歯の治療に取り組んでいるストイックな先生」を演じています。患者さんと治療に関する信頼関係を強固かつピュアなものにするためには、先生の話は「医療の話」にフォーカスされている必要があるのです。
ここでクローズアップされてくるのがスタッフのクオリティーです。スタッフには「なぜEndoを保険ではなく自費で治療しなければならないのか」「各治療の概要や価格の違いは?」などを、患者さんが分かる言葉を使って、確信を持って説明してもらう必要があります。スタッフは単なる「お手伝い」ではなく、先生と共に当事者意識を持って自費クリニックを盛り上げていく「相棒」的な存在でなければならないのです。ですから、ある程度の基本能力の高さが要求されると思われます。
実際、アメリカの大学へ講演に行った際に出会ったEndoクリニックのスタッフたちは、プロフェッショナリズムあふれる方々でした。彼女たちの給料は年間700~800万円ほどで、銀行窓口のスタッフよりも高収入なのだとか。ペンシルバニア大学のK先生も、「熟練したスタッフなしでは、治療クオリティーの維持は難しい」とおっしゃっていました。ちなみに私は、スタッフの採用に際してすべての候補者にペーパーテストを課し、数学的思考能力、推理能力、チャレンジ精神の有無を確かめています。
能力の高いスタッフであれば、先生と一致団結して当事者意識を共有し、「患者さん目線で居心地の良いクリニック」を一緒に作り上げることができます。
このような段階になると、クリニック内に「ハイソサエティーな雰囲気」が漂い始め、患者さんが自然と選別されていきます。自費による根管治療の重要性や、決して安くはない治療費の意味をしっかりと理解してくださる患者さんだけになってくるのです。
またこのような患者さんは、ほとんど例外なく、とても強力な「宣伝マン」になり、ご自分のお知り合いをクリニックに連れて来てくださるのです。こうして自費のEndoクリニックの経営が軌道に乗り始めます。
しかし先生方、ここで手を抜いてはなりません。昔から「築城10年、落城1日」と言われる通り、ネガティブなうわさは信じられない速度で浸透し、尾ひれ・背びれが付いて大炎上してしまいます。せっかくご自分で苦労して築いた「自費Endo城」を繁栄させ続けるためには、「日々是努力」あるのみです。
そしてこのお城が栄え続けるということは、先生方ご自身のためだけではなく、患者さんたちの利益にもつながる、とても社会的意義のあることだと私は確信しています。