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エンドドンティストとは何ができる人のことか

歯内療法専門医=エンドドンティストというのは、なにができる人のことを言うのでしょうか?」これは、トロント大学のエンドドンティスト育成コースの責任者であるDr. Shimon Friedmanが、日本で開講した同校初の「海外での歯内療法専門医育成プログラム」のスタート時に、日本の受講生の皆様に問いかけた質問です。
Dr.Friedmanは、トロント大学でも学生にまったく同じ質問を投げかけ、「エンドドンティスト」と「ジェネラルデンティスト」は何が違うのか、「エンドドンティスト」はいかにあるべきなのかを、学生が常に意識するように心掛けていらっしゃるそうです。
そしてこの質問の答えは、「診査・診断が的確に行える歯科医師」です。診査・診断は治療の最初にあって、最も難しくもあり、最も重要なプロセスです。ここを間違えてしまうと、その後にどれだけ優れた治療を施しても、すべて無駄になってしまうからです。
海外では、根管治療は大変な技術を伴う重要な治療に位置付けられ、治療費はとても高額です。ですから、根管治療に関する診査・診断は慎重に下されます。一方、日本の保険診療では、ご存知のとおり根管治療がとても安く設定されているため、気付かぬうちに「安直な治療」と認識されてしまっていて、「安易に神経を抜く」という結論に達してしまうのではないでしょうか。
また「エビデンスの重要性レベル付け」も忘れてはいけません。「たまたま試したら、できた」だけの個人の経験や記憶に基づいた結果にすぎないのか、きちんとしたデータを伴った再現性のある事実なのか。先生方は、診査・診断の基になりうる強いエビデンスを判別できる「眼」を持たなければなりません。
Dr. Friedmanは「日本の先生方にも、根管治療に誇りを持つとともに、診査・診断を慎重に行っていただきたい。また、それを実現させるための知識や思考プロセスを身に付け、ぜひとも自信を持ってエンドドンティストを名乗っていただきたい」と熱く語っておられました。
その他にコースでは、Dr. Calvin Torneckがバクテリアの特性を中心とした基礎生物学、Dr. Thuan Daoが痛みの仕組みを掘り下げた基礎医学を、最新の論文を引用したハンズアウトを用いて講義していらっしゃいました。
一見、治療にはまったく関係ないように見える基礎生物学や基礎医学がすべての礎になっていること、「原理原則や基礎」に立ち返って考えてみること、先人の蓄積した「強いエビデンス」の大切さを今更ながら痛感いたしました。
また、Dr. Torneckは御年80歳! ですが、驚くほど若く見えます。「脳細胞を使い続けること、好奇心を持ち続けること、使命感に満ちて仕事をすることが何よりのアンチエイジングなのではないか」と、ガイドブック片手にニコニコしながら奥様と京都旅行の計画を立てているDr. Torneck を見て、私はいろいろなことを学ばせていただいた気がしました。

寺内 吉継
東京医科歯科大学歯髄生物学研究室博士課程修了
デンタルアーツアカデミー主任講師
神奈川県開業。
最先端の歯科関連技術・知識の吸収を目的としたセミナー「デンタルアーツアカデミー」の主任講師として、日本に留まらず世界各国で講演を行うなど、幅広い活動を行う。

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