優秀な人材があらゆる分野を熱心に学んでいる台湾の歯科事情
先日、台湾のとあるスタディーグループのお招きで、台北と台中でハンズオンコースと講演をさせていただく機会に恵まれました。
そこで大変驚いたのが、台湾人の受講生の方々の熱心さ、英語でのコミュニケーション能力の高さ、そして知識の豊富さでした。
すべてのイベントが終了した後、「皆様の熱意や優秀さには本当に感銘を受けました」と、スタディーグループ主催者の先生に率直な感想を申し上げたところ、思いがけず、台湾の歯科事情をお聞きすることができました。
台湾でも日本と同じような国民皆保険制度が施行されていますが、近年、医科における医療費削減と規制強化が顕著になったため、そのような外部環境を嫌った優秀な人材が歯科に流入しているのだそうです。このため、台湾国内で最も入学が難しいのが台湾大学の歯学部だとか。さらに驚いたことに、主催者の先生は、泌尿器科のドクターでいらっしゃったにも関わらず、歯科のライセンスをとるために勉強し直されたそうです。「現場のことが分からないお役人が中途半端に介入してくると業界が混乱して、とても迷惑ですよね」と苦々しげにおっしゃった姿が印象に残りました。
しかし、優秀な学生が集まるようになった歯科業界は大きくレベルアップし、かなり活性化しているように見受けられました。日本と同じように、台湾でも歯科では自由診療を安易に行うことができます。前記のような優秀な方々が「グローバルスタンダードに追いつき追い越せ」とばかりに、歯科のあらゆる分野を熱心に学ばれているため、結果として台湾人の方々が世界最高峰の治療にアクセスしやすい状況になっているそうです。
ちなみに、台湾で歯科ライセンスをとった先生方にとって、さらなる高みを目指すための留学先として人気なのは、やはり欧米の大学です。ご存知のとおり親日家の多い台湾ですが、歯科の留学先として日本は選ばれないのだとか。「日本の歯科治療技術や歯科教育は、グローバルスタンダードから外れてしまっていますからねえ」と、日本の歯科の問題点をはっきりと指摘されてしまいました。
留学した先生たちの多くは、持ち帰った知識や技術をもとに自費のクリニックを経営されています。ご自身のこれまでの努力や技術の高さ、過去の治療実績に伴う自信の度合いによってそれぞれの診療項目に値段付けをし、互いに切磋琢磨しあっているのです。
ディナーの席で、ある先生が「台湾の歯科業界は優秀な先生方がたくさんいて確かに厳しいけれど、ライバルがいて競争があるからこそ自分も努力して成長できると実感しています」と、少し酔っぱらいながらおっしゃっていました。
今回の台湾講演ツアーでは「歯科医」という仕事にプライドを持っていらっしゃる先生方のキラキラした表情が何よりも印象的で、私自身も元気をもらって帰ってくることができました。