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皆様は、「宇宙船地球号』という本をご存知ですか?イギリス人のバックミンスター・フラーが1960年代に執筆したある種の未来への提言書です。こちらの書籍が金融業界で密かなブームになっていると聞き、わたしも手に取って眺めてみました。著者の深い洞察力に随所で驚かされましたが、もっとも唖然としたのは「人間の仕事を過度に専門化・セグメント化すると容易にコンピューターに代替されてしまう。機械に代替できないのは人間に特有な柔軟な思考力やコミュニケーション力であり、こうした能力を伸ばせる人が成功できる」ことを1960年代に言い当てていた点です。私は、彼の指摘はまさに現在の医歯業界、特に歯科業界にあてはまると感じました。
こちらのコラムでも何度も申し上げておりますが、治療でもっとも大事なパートは「診査診断」です。患者さんに「歯が痛い」と言われれば神経を抜き、それでも痛みがとれないと言われれば「抜歯」してしまう、というのは不適切な対応です。歯の痛みが歯原性疼痛でなければ、抜歯をしても患者さんの痛みはとれません。患者さんのお話を聞きながら、身体全体を勘案し想像力を働かせながら、痛みはどこから来るのかを的確に診査診断する必要があるでしょう。また、問診を行っているときの患者さんの顔色、微妙な反応、声のトーンや回答をくれるまでの間など、人間だからこそ得られる、数値化できない情報がたくさんあります。「口腔周辺」にむやみに特化しない幅広い知識や、総合的な判断力こそがAIが代替できない、歯科医が今後も歯科医として依って立つ所以と考えております。
最近、自分の親族の一人に難病の疑いがあるとの診断が出たため、その分野がご専門の著名な医師にセカンドオピニオンを求めました。病名を診断するに至った根拠、治療法のオプション、それぞれのメリットとデメリット、そして私たち親族から聞き出した患者さんの現状を勘案した上でのベストと思われる治療法と今後起こりうるシナリオを大変わかりやすく説明して下さりました。1時間の枠を頂いておりましたが、気が付くとお約束の時間を超過する寸前でした。勿論、面談は自費診療でしたが、満足度は大変に高く、私自身も様々な点で勉強になった時間でした。
現在、私は歯学部を医学部から独立させている現在の教育システムに疑問を持ち始めています。患者さんの身体を治したいという志を持つ学生は数年かけて身体全体の仕組みを学び、その上で歯科を含めた専攻を選んでいく、欧州方式のほうが望ましいのではないでしょうか?先日、政治家の方との会食で当該持論を唱えましたところ、「難しい問題だが大変に興味深い」とおっしゃって頂きました。実現のほどは分かりませんが、いわゆる「医歯学合併システム」は歯学部の定員割れによる歯科医の劣化や各科の人数の偏りを解決するための有力なオプションとなりうると考えているのです。皆様はどう思われますか?

寺内 吉継
東京医科歯科大学歯髄生物学研究室博士課程修了
デンタルアーツアカデミー主任講師
神奈川県開業。
最先端の歯科関連技術・知識の吸収を目的としたセミナー「デンタルアーツアカデミー」の主任講師として、日本に留まらず世界各国で講演を行うなど、幅広い活動を行う。

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