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トロント大学教授、Shimon Friedman先生は、大変特異な経歴を持つ先生です。イスラエルのヘブライ大学で歯科医師のライセンスを得るとともに、イスラエル軍に従軍。かのレバノン紛争には、大砲部隊の大佐として参戦されました。決して少なくない人数の隊を率いて砂漠を進軍されたそうです。
そんなFriedman先生が、ご同僚のTorneck先生やMachtou先生などに「必ず訪れるべき東京の観光スポット」として推薦されているのが靖国神社の遊就館です。こちらは、明治維新以降に日本が体験した戦争の足跡を淡々と(珍しく)客観的に展示した、大変に見応えのある施設です。
現地に同行した際、ミッドウェイの海戦のパネルの前で、「この戦いが太平洋戦争のターニングポイントで…」と私が説明しようとすると、「おそらくYoshiよりも私の方がよく知っているよ。私は世界史上の主な戦いの背景、戦況、結果とその理由についてイスラエル軍で指揮官向けの座学で学んでいるから」とやんわりと静止されました。そこで、「じゃあ、太平洋戦争に日本が負けたのはなぜだと思う?」と聞いてみました。すると、Friedman先生は、(言いにくいことを聞くなあ…。困ったやつだ)という笑みを浮かべつつ、「経済力とか敗因は色々だと思うけれど…。相手方についての正しい情報や現状認識に基づいた想像力の欠如が大きい。戦争は始めるよりも終わらせる方がずっと難しいからね」とおっしゃいました。
Friedman先生が主催する「トロントスタディープログラム」において、先生が好んで使っている大変ユニークなスライドがあります。馬に乗って戦いに赴こうとしている王様とその後ろで満面の笑みを浮かべた武器商人が描かれているのですが、Friedman先生によると、こちらは「バクテリアとの闘いに出陣する歯医者と歯科業者の図」だそうです。
このスライドの趣旨は、「武器商人(=業者)だけが喜ぶような戦争(=治療)を絶対にはじめてはいけない。相手(=歯の痛み)の背景・要因をキチンと把握し、本当に自分が戦いに赴く必要があるのか(=歯の治療が必要な歯原性の痛みなのか)を突き止めるべきだ。(歯が痛いのならとりあえず削って、神経を抜いてみよう)というような場当たり的な治療は、無用に先生方の時間とお金の浪費になるだけでなく、患者さんの歯を疲弊させるだけだから」というものだそうです。
現在、有難いことに第三期を迎えているFriedman先生主催のトロントスタディープログラムですが、日本の先生方についてのご感想を「学ぶ意欲の高い優秀な先生が多いのだが、診査診断の際に身体全体を俯瞰して考える習慣をつければもっと伸びる」とおっしゃっていたのが印象的でした。
海外では、「医者・歯医者」の境界はなく、すべて「Dr.」 で一括され、歯医者はDr.の中の「歯の専門家」と認識されます。
是非、歯を「母屋から離れた物置」のように考えるのではなく、身体全体の一部として有機的に診査診断し、的確な現状把握に基づいた想像力を働かせて治療してまいりましょう!

寺内 吉継
東京医科歯科大学歯髄生物学研究室博士課程修了
デンタルアーツアカデミー主任講師
神奈川県開業。
最先端の歯科関連技術・知識の吸収を目的としたセミナー「デンタルアーツアカデミー」の主任講師として、日本に留まらず世界各国で講演を行うなど、幅広い活動を行う。

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