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わたしが関わらせていただいている、デンタルアーツアカデミーの年始最初の外国人講師は、お馴染みのトロント大学スタディープログラムを率いる、シモン・フリードマン先生でした。今回は、ピエール・マシュトー先生による、「根管治療におけるファイル・モーターのすべて」の他、フリードマン先生の「論文の読み方、エビデンスの分析の仕方」がトピックでした。
論文を読んでいると、「成功症例についての考察」をよく見ます。ですが、ここでの「成功」とはどういうことなのでしょうか? 1960年代に言われていた「成功」とは、「レントゲン写真に透過像が見られないこと、バクテリアが存在しないこと」2点だったそうです。歯科医師の目線にフォーカスした「成功」の要件ですが、現在では、より視点を広げ、患者さんの目線を加えて、成功を定義づけることが要求されています。いくら医学的に正しいことをして、バクテリアと透過像を排除しても、患者さんが治療に納得して喜んでくれなければ失敗におわるのです。
治療に「成功」するためには、適切な診査診断を経て患者さんの現状を正しく把握し、エビデンスに基づいた予後の良い治療法をそれぞれのベネフィットとリスクとともに患者さんに示し、患者さん自身に決めてもらうのです。その際、歯科医師が自分の得意な分野に患者さんを誘導するなど、バイアスのかかった情報を提供してはなりません。一見、大変面倒くさく、煩雑なプロセスに見えますが、万が一、患者さんと争いになってしまった場合も、上記のプロセスをしっかり執っていたことを説明できれば、歯科医師は守られるのだそうです。しかし、ここまでの情報提供と一人ひとりの患者に対する深い理解は、「患者の回転を重視」する保険診療ではとても困難です。患者の権利が強くなってきている昨今こそ、患者・歯科医師双方のために自費のエンドの採用が不可欠だと痛感いたしました。
さて、「予後の良し悪し」を判断するのに大切なのが、「エビデンスの分析力」です。成功症例を集めて、変動要因を見極め、検定処理をするのですが、「なぜその検定法を採用したのか、検定の結果何が言えるのか」を的確に把握し説明できることも必要だといいます。フリードマン先生によると、しっかりした検定処理を伴ったエビデンスは案外と少なく、すでに発行されている論文中の検定処理すら誤っている場合があるそうです。
4つのカテゴリーからエビデンスのクオリティを分析していくのですが、こうした考え方はとても新鮮で、今後の論文精読に大いに役立ちそうだと思いました。
今回来日されたフリードマン先生は、なんと、「ひらがな」をマスターされていました! 日本人の先生方と直接コミュニケーションをとりたいと、日本語を学び始めたそうです!!
年齢を理由に諦めず、何歳になっても興味のあることに挑み続けるフリードマン先生に、大いにインスパイヤーされた一週間となりました。

寺内 吉継
東京医科歯科大学歯髄生物学研究室博士課程修了
デンタルアーツアカデミー主任講師
神奈川県開業。
最先端の歯科関連技術・知識の吸収を目的としたセミナー「デンタルアーツアカデミー」の主任講師として、日本に留まらず世界各国で講演を行うなど、幅広い活動を行う。

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