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先日、Youtubeでアーカイブ映像を見ていたところ、1997年11月の「山一證券倒産会見」を目にする機会がありました。当時まだ若かった自分は、号泣する社長を見て「人前でそこまで泣かなくても…」とやや引いてしまった覚えがあります。あれから20年以上経ちました。日本経済は未だに浮上しません。また、ここ10年は企業の不祥事が頻発しましたが、「会社の再構築を見届けるのが責任の取り方だ」などといって、最も責任が重いはずの経営トップが居座るケースが散見されます。久しぶりに見た山一證券の野澤社長は、「倒産を経営トップの責任と潔く認め、自分よりも、社員の行く末を案じ、その処遇を自ら周りにお願いする」という、近年には見ない男気を感じ、今更ながら感動しもらい泣きしそうになってしまいました。
ところで、トップの責任の取り方は組織の新陳代謝や成長力を左右するような気がします。一度トップに就くと、「長くポジションを維持したい」とか「退任後まで自分の影響が及ぶようにしたい」などと考えてしまうのが人情でしょう。しかし実際には「自分の実力を心得、引き際を誤らない」のが大切なのかもしれません。
海外の学会には様々な「Award」がありますが、最も選考基準が厳しく、納得の歴代受賞者が名を連ねている賞は「Lifetime Educator Award」だと思います。こちらの賞は、自分の研究実績だけでは受賞できません。「カバン持ちや子分」を何人連ねてもダメです。「どれだけ優れた研究者・臨床家を育てたか」、つまり「Endodontics業界の将来に世代を跨ぐ貢献ができたか」が重要なのです。近年の受賞者としてトロント大学のShimon Friedman 先生やCalvin Torneck先生がいらっしゃいますが、両先生はほとんど同じタイミングで第一線を退かれました。引退の理由を尋ねたところ、「教育者として自分が納得できるパフォーマンス・クオリティの維持に難しさを感じ、一研究者に戻ろうと思った」と回答されました。ここでいう「教育者としてのパフォーマンス」とは、「常に最新の論文を追いかけ、毎年変わる学生に何をどのように教えるのがベストなのか」を考え続ける事を意味しています。これを「エッジの利いた色々な若い学生に対峙できる余裕含みで継続できなければ学生たちに申し訳ない」とおっしゃっていました。
これを聞き、私設の教育機関を主催する私としても、次世代を担う若手の先生方に対して正しい方向で実力を発揮できる素地を提供することが責務と痛感いたしました。私たち日本人は「和を貴ぶ」傾向が強いためか「周囲への気遣い」が仕事をやる際に最前面に出てしまうため、本来の到達点まで行きつかない場合が多くあります。ですが、次世代の歯科医療は今よりも進んでいて当たり前です。皆さん、恩師を超える何かを次世代にバトンタッチする気概を持っていますか?是非、このことを念頭に勉強に励み、毎日の診療に当たってみてください。

寺内 吉継
東京医科歯科大学歯髄生物学研究室博士課程修了
デンタルアーツアカデミー主任講師
神奈川県開業。
最先端の歯科関連技術・知識の吸収を目的としたセミナー「デンタルアーツアカデミー」の主任講師として、日本に留まらず世界各国で講演を行うなど、幅広い活動を行う。

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