ありがたいことに昨年はウェビナーをやらせていただく機会に恵まれ、新たに多くの方とお知り合いになる機会に恵まれました。そのような中、少なくない皆さまが、「自費診療をはじめたきっかけは何か」という点にご興味を持たれているようです。以前も取り上げさせていただきましたが、改めて申し上げるとすると、自費診療をスタートさせたのは開業して数年目の1990年代後半。当時のことを思い起こすと、以下の要因から全く迷いなく保険診療から自費診療にシフトしました。
保険診療ではやりたい治療ができない
少しでも最先端の知識・技術を勉強すると、「保険適応の範囲」でできる治療というのがかなり限定的かつ古い治療であることが分かってきます。エビデンスに基づいた、キチンとした治療を施そうとすると、自然に保険適応の枠外にはみ出してしまいます。
経済合理性にかなっていない
クリニックの家賃、材料代やスタッフへの賃金等々、治療に必要な費用を計算すると、保険診療でいただける金額では到底賄えないことがわかります。数十年前には意義深かった「保険診療」ですが、やや制度疲労を起こしてしまっていて「正しく」治療してクリニックを継続させるのが難しくなってしまっているのです。
ですが、自費診療への完全シフトを決意したきっかけは、患者さんの一言です。一時期、顕微鏡を導入しながら保険診療を展開していた時期があります。顕微鏡下で見える色々なものに最大限対応しつつ、休み時間を削って「患者さんのために」頑張っておりました。にもかかわらず、患者さんから投げかけられた言葉は「こんなに時間をかけて何をやっているんだ?他のクリニックはもっと短時間で治療を終わらせるぞ。顕微鏡なんて使って恰好をつけて。先生は下手くそだ」この一言はかなり衝撃でした。自分やスタッフの人件費を犠牲にして「患者さんのために」頑張っていたつもりでも、当の患者さんに伝わっていなかったのでは意味がありません。すぐに「一人ひとりの患者さんにじっくり向き合う時間をとり、キチンと説明をして自費治療をしていこう」と方向転換を決意しました。
「自費診療をスタートさせよう」と一旦決意したならば、絶対に振り返ってはいけません。「やっぱり保険に戻そうか‥」などとうじうじすると院内の士気低下につながってしまいます。
わたしは、自費へのシフトを決意した次の日から、患者さんへの説明をスタートいたしました。「自費診療で根管治療に取り組むことにより、患者さんごとの症状に対してベストソリューションの治療が提供できること、患者さん一人ひとりによりじっくり取り組むことができるようになること」など、自費診療と保険診療の違いや自費診療にシフトする意義をしっかり説明していきました。
説明の甲斐あってか、とても光栄なことに、ほぼ9割の患者さんが自費診療への転換に納得し、継続して通ってくださっています。また、自費治療を続けるならば、患者さんのご期待に応えるべく、勉強を怠ってはいけません。そして、勉強の方向として、是非「歯の病気を治す本来の医者の役割を果たす役割」を選んでいただきたいです。「自分の歯を何としてでも残したい」と切望していらっしゃる患者さんはとても多いため、この知識と技術を会得すれば、そこには見たことのない「Blue Ocean」が広がっているのにお気づきになりますよ!