ありがたいことに、私が受け持っている「イニシャルエンドハンズオンコース」「リトリートメントハンズオンコース」は多数のキャンセル待ちが出ているような状況です。本当にありがとうございます。両コースの冒頭で、約3時間余りを使ってそれぞれのコースの内容に繋がる「診査診断・痛みの作用機序・細菌学」を話しているのですが、ほぼ全員の方がここで躓いてしまいます。皆さま、実習は大好きで、治療テクニックを習得しようと熱心に取り組んでくださいます。
しかし、臨床の場では、最初の診査診断を間違えてしまうとせっかくのテクニックを正しく披露できず大変に勿体ないです。海外の研究によると、歯科に来る患者さんの約4割の痛みの原因に非歯原性のものが含まれています。にも関わらず、「歯の痛みは歯が原因なのだから、とりあえず神経を抜いてみよう」と深く考えずに抜髄にいってしまう先生方があまりにも多い現状はとても残念に思います。
この現状の原因は、「医学部」と「歯学部」を最初から分けてしまい、「歯」をあたかも独立したエリアのように捉えてしまっている教育システムにも問題があると思います。グローバルにみると、全学生に全身の基本事項を学んでもらった後に歯科を含む専門分野を選ばせるシステムが主流だったりします。また、「自費」というと、「金のクラウンにしますか?」「セラミックをかぶせますか?」などと「エクステリア部分」で差をつける、「物販」のように考えてしまっている歯科医師にも問題があると考えています。
歯科医師は歯の専門医ですから、歯の病気を治すことにこそ付加価値があります。医科では、「セカンドオピニオン外来」が立派に病院の科として成立しているように、診査診断が患者さんに提供するサービスのひとつとなっています。先生方も「歯の病気を治すプロフェッショナル」として、ご自身の知識に付加価値を求め、的確な診査診断のもとに治療テクニックを発揮してください。
また、「診断結果、特に非歯原性の診断結果を患者さんに説明できない」という質問もよくいただきます。答えは、「先生自身が確信を持つこと」です。具体的には、診査診断を下すプロセスはキレイなマインドマップが描けるのです。
判断の分岐点には必ず統計に裏付けされたエビデンスがあります。これを淡々と、確信をもって、かつ患者さんにわかりやすく説明していくのです。このレベルになるためには、一度気合を入れて「診査診断のためのマインドマップの作り方」を勉強する必要がありますが、先生の付加価値は格段にあがります!
いかがでしょう?自費診療につながるのは「物販」の充実などではなく、「先生の専門知識の蓄積」だということがおわかりいただけましたか?