Dental Choice ロゴ

このサイトは国内の医療関係者の方々への情報提供を目的として作成されています。
一般の方への情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。

あなたは医療関係者ですか?

MENU

Dental Choice ロゴ

6月29日から7月2日にかけて、ペンシルバニア大学のクラッチマン先生とアトラス先生のハンズオンコースを開催させていただきました。当該イベントはコロナ禍前に企画したもので、実に4年越しの開催となります。ハンズオンコース中は両先生と様々なトピックについて情報交換をいたしましたが、いい意味でショックを受けたのは、米国で歯内療法専門医として大病院に勤務医として所属した際にもらえる初任給の高さでした。日本円に換算すると4500万円にものぼるそうです。「お金持ちになれる!」ということで同大学の根管治療専門医養成コースの入学試験の合格率は2~3%ということで、わが国の旧司法試験顏負けの合格率の低さに大変驚きました。また、多岐のニーズが見込める、ということで、企業の新製品や技術に関する開発投資も大変に盛んです。両先生の講義も4年前と比べて「長期予後を安定させるためのエビデンス」にさらに磨きがかかっており、大変刺激を受けました。
日本では忘れられがちですが、医歯学は「科学」です。患者さんの状況に応じ、エビデンスに基づいた治療法を選択することで予知性のある治療となるのです。日本の学会で散見される、「症例報告」は海外の学会では好まれません。「匠の技」や「経験」に基づいた、「一度限りかもしれない症例の報告」では、再現性や長期予後が未知数と思われてしまうからです。
先生方には是非、適切に統計処理を行った、エビデンス力の高いデータを作るのがどれだけ大変か、バイアスのかかっていない情報がどれだけ大切で価値が高いか、「勉強するには根気と時間とお金が必要だ」という正しい価値観を是非とも養っていただきたいと思います。実際、わたしが20代の頃にもっともお金を使っていたのが、欧米の学会参加費と米国の各大学が休暇中に開催するハンズオンコースでした。飛行機代と宿泊代をとことんまで切り詰めても各コースの参加費が高額なため、一回の支出が数十万円後半から3桁万円にのぼったのを覚えております。行く度に「何かを持って帰ってやる、きっと回収してやる」と呪文のように唱えていたのを昨日のように覚えております。このように金銭的にも時間的にも自身に「痛み」を伴いつつ得た知識はやはり「血となり肉となる」ものです。そして、そんな苦労をして得た知識は、絶対に安売りをしたくないと思い、30代手前で自費クリニックの開業に踏み切った次第です。
最後に私事で恐縮ですが、わたしは現在、2024年の顕微鏡歯科学会の大会長を仰せつかっております。上記の自分の理想を実現すべく、AAEをはじめとした国際学会のキーオピニオンリーダー3名に直談判して来日を確約いたしました。参加者の皆さまのテンションが爆上がりするよう、豪華な会場も抑えさせていただき、その代わりに参加費や企業展示料を値上げするプランを学会本体に提案いたしました。
しかし、大会の運営や価格付けについては本当に様々な考え方があるようで、なかなかわたしの思い描いた大会を実現するのは難しいようです。「最大公約数の着地点を見つける大変さ」や「業界内の多様性」を目の当たりにし、私自身も「人生勉強の連続だ!」と実感した次第です。

寺内 吉継
東京医科歯科大学歯髄生物学研究室博士課程修了
デンタルアーツアカデミー主任講師
神奈川県開業。
最先端の歯科関連技術・知識の吸収を目的としたセミナー「デンタルアーツアカデミー」の主任講師として、日本に留まらず世界各国で講演を行うなど、幅広い活動を行う。

関連タグ

関連記事