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ストック型予防医療の理論と実践 第35回

ストック型予防医療の理論と実践 第35回

FEED NOTE

辻村 傑 辻村 傑
更新日:

ICCMS™の臨床導入に向けたクイックリファレンスガイド

健康アウトカムに重点を置いた本システムICCMS™ は、

①新たなう蝕の発生を予防する。

②既に存在するう蝕の進行を抑制する。

③初期う蝕では非切削での治療により、又は進行したう蝕では保存的な修復処置により歯質を保存する。

④リスク因子を管理し、適切な間隔で患者のリコールを行いながら、定期的な経過観察と評価を行う。

4つの項目の達成を目指したう蝕管理モデルを提供する。
まず、簡便なICDAS う蝕分類モデルを用い、う蝕進行度のステージ分類とう蝕活動性の評価を行う。そして本システムの『個人に合わせた予防の観点から、リスクを改善し、歯質保存的な管理計画』を提供する。
また、長期的なう蝕アウトカムを改善するために医療面接、臨床検査、リスク評価および個人に合わせた治療計画の策定を行うことを目的とした(入手可能な最良のエビデンスに基づき策定された)包括的な臨床プロトコールを示す。

ICCMS™の4要素の詳細とリスクに基づくリコールとの関連性について

う蝕管理システムは、それぞれの要素が連結しつつ循環するシステムである。図1は、推奨する実施方法を表している。この循環は、リスクに基づいたリコールの後に再スタートする。

要素1 患者レベルにおけるう蝕リスクの評価

口腔内診査にあたっては、応急処置が必要な疼痛発現部位が無いことを確認したうえで、患者のう蝕のリスク因子を評価する。

患者レベルのう蝕リスク因子

①頭頸部の放射線治療
②口腔乾燥(全身の状態、服用薬の副作用、自覚症状)
③口腔衛生状態の不良
④フッ化物局所応用の不足
⑤高頻度/多量の糖分の摂取
⑥初期対応の遅れ
⑦社会・経済学的状況/医療アクセス格差
⑧子供に関して:母親または養育者の重篤なう蝕経験

要素2 口腔内のう蝕リスク評価によるう蝕進行ステージ分類と病変の活動性

口腔内のう蝕リスクを決定するためにプラークの評価を行った上で、う蝕のステージ分類と病変の活動性の正確な評価に先立ち歯面清掃を行う必要がある。

口腔内レベルのう蝕リスク因子

①唾液分泌量の減少/視診で明らかな口腔乾燥
②露髄、潰瘍、瘻孔、膿瘍、歯性敗血症
③う蝕経験
④肥厚したプラーク: プラークが停滞しやすい部位における粘着性バイオフィルムの存在
⑤不良補綴物、修復などのプラークリテンションファクター
⑥根面露出
これらのリスク因子は、う蝕リスクと関連性がある。患者のう蝕リスク(低、中、高)は、CAMBRA や Cariogram などのシステムにより評価できる。

要素3 意思決定:統合と診断

診断の第3段階では、患者および病変レベルの両者について、前述の2要素で得られた情報を総合し分析する。これにより、各リスク(低/中/高リスク)における新たな病変あるいは進行性病変の発症の可能性、そして各病変における活動性(活動性/非活動性)や重症度(初期/中等度/重度)を統合し診断することにつながる。(表1)

要素4 管理:個人に合わせたう蝕予防、制御と歯質保存的な修復処置

以下の要素からなり、相互に関連する。(図2)
▶患者ごとのう蝕の発生および進行リスクの管理
▶個々のう蝕病変の管理:重症度に応じた治療法を明示し、活動性が高い場合にはう蝕処置を行う。

経過観察および再来院(リコール)

患者のう蝕状態を再評価し経過観察するための、個人に合わせた来院の間隔を検討する必要がある。リコールの間隔は、年齢(歯の萌出パターンと他の指標)とリスク(病変レベルと患者レベル)により決める。ICCMS™ では
全体的なリスク管理、予防措置の評価、そして初期病変の経過観察(進行状態を確認するため)を行うためのリコール間隔と、口腔衛生に関する行動の改善を管理するための来院を区別している。乳歯列における歯冠部う蝕に関しては、患児の協力レベルと乳歯の脱落時期によりう蝕管理を決定する。

辻村 傑
つじむら歯科医院グループ 総院長
1993 神奈川歯科大学 卒業
1995 つじむら歯科医院 開業
1997 医療法人社団つじむら歯科医院 開設
2008 神奈川歯科大学生体管理医学講座/薬理学分野大学院
2010 南カリフォルニア大学客員研究員/南カリフォルニア大学アンバサダー(任命大使)
2012 ハートフルスマイルデンタルクリニック/茅ヶ崎 開業
2013 インディアナ大学 歯周病学インプラント科/客員講師
2014 インディアナ大学医学部解剖学/顎顔面頭蓋部臨床解剖 認定医

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