院内に歯科衛生アセスメント(口腔内外の診査)を導入しよう!
歯科衛生計画の立案に先立ち、個々の患者の全身状態を注意深く観察しながら口腔および隣接する組織を精査することは、全体的なアセスメントを行うために不可欠となります。
- ▶粘膜すべての部位を検査し、どんなに小さな異常でも見逃してはなりません。
- ▶その人の生命が口腔の検査にかかっているといっても過言ではなく、初めての患者やメインテナンスアポイントメント時の患者に対する基本的な検査の実施は、歯科疾患を抑制するための現実的な対応としての条件となります。
- ▶口腔組織は全身の健康状態を鋭敏に反映していて、体のほかの部分にある不顕性の疾患の最初の徴候が、口腔組織の変化としてみられることもあります。
- ▶口腔の正常な外観からの逸脱をみつけるためには、口腔や周囲組織の正常な形態、解剖学的構造、生理機能の知識と理解が必要となります。
検査の目的
患者の口腔全体をケアするうえで、徹底した検査は必須となります。検査時の歯科衛生士の役割は次のとおりとなります。
- ▶口腔内や口腔周辺はもちろんのこと、患者の全身状態を観察し、正常から逸脱した部分や、明らかに疾患と思われる部分を記録する。
- ▶アポイントメントごとに、病的な部位、特にがんを疑わせる病変部の有無を検査する。
▶感染症の徴候により、現在のアポイントメントを延期する必要性や急を要する医師への相談や治療の必要性を評価する。 - ▶初期病変を早期に発見することで、歯科疾患が進行したり回復できない状態や治療できない状態にまで進展するのを防ぐ。
- ▶追加検査や医学的評価のための照会を必要とする疑わしい状態を特定する。
- ▶歯科衛生介入や指導に、特別に配慮が必要な口腔内外の異常を特定する。
- ▶一連のメインテナンスごとに口腔内の検査結果を比較し、歯科治療や歯科衛生介入の効果や、患者指導が成功したかを判断する。
- ▶歯科衛生診断と歯科衛生計画を継続的に記録することで、それを法的な根拠とすることができる。
検査の内容
- ▶今日の患者のケアの概念では、患者の全身を治療するのであって、口腔内、まして歯とその周囲組織だけを対象とするのではない。
- ▶検査は口腔の健康に影響を及ぼす患者の全身の生理的、精神的あるいは心理的な要素までも含むことになる。
- ▶歯科疾患を効果的に抑制し、予防するために、徹底した検査をアポイントメントごとに行うべきである。
Ⅰ検査の種類
A 精密検査
- ▶精密検査には、すべてのアセスメント要素を総括することも含まれる。口腔内外の検査は、患者の徹底したアセスメント要素の一つにすぎない。
- ▶新たな患者に対しては、包括的な治療を行う前に必ず精密検査を行う。歯や歯周組織の緊急治療が明らかに必要なときでも、最初に最小限の検査を行う。
- ▶精密検査は、治療が済んだ患者の通常のメインテナンス時にも行う。
B スクリーニング
- ▶スクリーニングは、通常特定の目的をもつ簡潔で予備的な検査のことである。
- ▶スクリーニングは、患者の最初のアセスメント時に、処置の優先順位を決定するために行う。
▶地域スクリーニング:集団における特定の疾患や健康状態をもつ患者数を特定するための調査に用いる。
C 限定検査
緊急の場合に用いられるスクリーニング検査であり、急性疾患の管理に用いる。
D フォローアップ検査
- ▶限定的なフォローアップ検査は、 治療後の治癒のチェックに用いる。例えば、壊死性潰瘍性歯肉炎の初期治療後のような場合である。
▶包帯除去や抜糸の場合
E メインテナンス/再評価
- ▶歯科衛生計画が完了し、予想された健康の回復に続く一定期間のメインテナンス。
- ▶メインテナンス時の検査とは、新しい歯科衛生診断と歯科衛生計画において行われるすべての再アセスメントのことをいう。
次回は「検査の方法」についてお話させていただきます。