院内に歯科衛生アセスメント(口腔内外の診査)を導入しよう!
歯科衛生過程5つのうち、最も臨床導入が優先されるべき「歯科衛生アセスメント」。今回は、形態学的病変の分類を前号のおさらいを含めご説明します。
形態学的分類
ほとんどの病変は、正常な皮膚や粘膜に比べ、隆起状、陥凹状、あるいは平坦に区分される。
Ⅰ 隆起した病変
隆起した病変は、平坦な皮膚や粘膜上に見られ、水疱型と非水疱型がある。
A 水疱型
水抱型病変は液状成分を含み、多くは軟らかく半透明である。小水疱、膿疱、水疱の形をとる。
- 1 小水疱:直径1cm以下の小さな、薄い皮膜で覆われた境界明瞭な病変である。漿液や粘液を含み、白色に見える。
- 2 膿疱:直径5mm前後で、内部に膿が入っているため黄色味を帯びる。
- 3 水疱:直径1cm以上で、その内容液は漿液または粘液であるが、ときに血液を入れることもある。色は内容液の種類による。
B非水疱型
非水疱型の病変は硬く液体を含まないもので、丘疹、小結節、膿瘤、プラークとして見られる。丘疹、小結節、膿瘤は基底部の形態で分類される。●図1に示すように有茎性病変は細い茎部で付着しているが、無茎性病変は病変部に一致する広い基底部をもっている。
- 1 丘疹:点状から5mmくらいの小さな充実性の病変で、点状、球状、頂上が平坦なものがある。
- 2 小結節:丘疹より大きく、直径5mm以上1cm以内の病変。
- 3 腫痛:2cm以上の幅径を持つ病変で、一般的に腫脹または増大したものを指す。この場合は良性悪性を問わず、新生物(腫瘍)を意味するものではない。
- 4 プラーク:広く平坦な頂部を有するわずかに隆起した病変で、直径5mm以上あり、糊で貼りつけたように見える。
Ⅱ 陥凹した病変
陥凹した病変は、皮膚や粘膜より窪んで見える。外形は規則的または不規則で、陥凹部の辺縁は平坦または隆起していることがある。深さは通常、浅い、深いと表現する。深い病変とは3mm以上の深さのものをいう。
A 潰瘍
深く陥凹した病変は潰瘍であり、上皮が欠損し結合組織が露出する。陥凹部の中心は灰白色から黄色で、紅色の辺縁に囲まれている。潰瘍は隆起した病変 (小水疱、膿疱、水疱)が自潰して形成されることもある。
B びらん
浅い陥凹した病変で、欠損は上皮内にとどまり、上皮下の結合組織にまでは及んでいない。
Ⅲ 平坦な病変
平坦な病変は、正常な皮膚や口腔粘膜と同一の面としてみられる。孤立性あるいは多発性の病変として存在し、形は規則的または不規則である。
斑点は周囲の皮膚や粘膜と高さが同じ限局した病変で、周囲の正常組織と色の違いで認識される。
Ⅳ その他の用語
- ▶痂皮:血液、液、膿、あるいはそれらの混合物が凝固したり乾燥したもので覆われた外皮、またはかさぶた。痂皮は小水疱が潰れたあとに形成されることがある。たとえば水痘の皮膚病変は、最初は斑点、次いで丘疹、小水疱、そして痂皮となる。
- ▶紅斑:種々の形、大きさの赤みを帯びた部分
- ▶外方増殖性の:上皮より外側に(遊離面に)向かって増殖する。
- ▶硬結性:硬化した、硬い
- ▶乳頭状:頭状の小さな突起、あるいは隆起
- ▶点状出血:針尖から針頭大 (1~2mm) の出血点
- ▶偽膜:組織表面の炎症の際に生じる。有機物、析出したフィブリン、壊死細胞、 炎症性細胞などからなる粘着性のない膜様部分。
- ▶ポリープ:正常な組織の表面から外側または上方に突出した、種々の大きさの有茎性の組織。
- ▶点状の:周囲の組織とは色調、隆起、触感で判別される点状または斑状の部分。
- ▶隆起:硬口蓋の正中部(口蓋隆起)や下顎小臼歯部舌側(下顎隆起)に認められる骨の高まり。
- ▶いぼ状の:粗造なコブのような部分。
次回は、口腔がんの発見方法についてお話します。