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令和6年度の診療報酬改定全体が徐々に明らかになってきました。まず、全体の歯科医療費については、+0・57%(賃上げ分+0・28%程度を含む)で決定しました。当初、マイナス改定と噂されておりましたが、最近の賃上げムードに押されてプラス改定となったようです。また、詳細(点数貼付け)が3月頃発表され4月1日から適応されるのが通例でしたが、新しいルールの適応は、6月1日からということが既に決定しております。

中央社会保険医療協議会(以下中医協)の情報

診療報酬改定については、厚生労働省中央社会保険医療協議会にて話し合われます。
2023年12月15日に「歯科医療(その3)」が発表され、今回の改定の具体的な内容が見えてまいりました。資料には、
(1) 歯科医療の現状
(2) かかりつけ歯科医機能に係る評価
(3) 院内感染防止対策
(4) 歯科疾患の重症化予防
(5) 電話や情報通信機器を用いた歯科診療
(6) 歯科固有の技術等
6項目について改定に向けた方向性が述べられております。

歯科医療の現状

中医協での議論を踏まえて保険改定が行われるわけですが、財政的な縛り、その時々の社会的な要求、将来に向けての準備など多くの内容が含まれております。当然、1回の改定のみで完了できることはなく、令和8年度、令和10年度で実装されるものも少なくありません。テーマごとに分けて解説を加えたいと思います。

1 歯科医療提供体制構築のために施設基準を整理・検討すべき

かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(以下か強診)とそれ以外の歯科医院の違いが分かりにくいとの指摘が出ており、役割や名称も含めて変更する方向と思われます。か強診の施設基準が下がるとは思えず、現状よりも高い基準を求められるようです。具体的には、これまでの基準に加えて、
・小児の心身の特性等に関する研修の受講
・小児の口腔機能管理に関する研修の受講
・継続的、定期的な管理の実績(長期管理加算の算定実績と考えられる)
・口腔機能の獲得、維持・向上に関する評価の算定実績(口腔機能管理料算定数)
・在宅医療を専門とする歯科医療機関でないことの届出
・歯科訪問診療における連携体制の確保
などが示されています。(図1 中医協資料より)研修重視だったものが、実績重視に変わったとの印象を受けます。「か強診を新規で取ること」のハードルは上がっており、現在「か強診」届出済み歯科医院であっても毎年実績を出さないといけないわけです。多くの方が誤解されていると思いますが「か強診」は更新が必要です。例年7月(今年は8月)の実績報告(保健所提出)で基準を下回れば届出を取り下げなければなりません。おそらく、今年6月までに届出できれば、1年間は「実績があるもの」として取り扱われると思います。

2 歯科疾患の管理や重症化予防

歯科疾患管理料及びその加算項目については算定回数も順調に増加しています。う蝕の重症化予防にフッ化物歯面塗布処置が行われていますが、前改定で「根面う蝕」に対する同処置の算定対象を65歳以上の外来患者にも拡大しました。日本歯科保存学会から根面う蝕の非切削でのマネジメントを観点とした診療ガイドラインが作成され、さらに対象拡大が見込まれています。
また、糖尿病患者では、歯周病の発症頻度が増加したり、憎悪がみられることから、SPTの治療間隔を年4回よりも短くすることが推奨されるとし(日本歯周病学会の歯周治療ガイドライン)、3月1回が緩和される方向が示されています。
さらに、歯科衛生士業務が多様化・高度化していることから、評価の見直しが行われる方向となっている。20点程度増点されるのではないでしょうか。

3 歯科固有の技術等

(a) 口腔内装置(いわゆるマウスピース)を歯の外傷後の安全管理、重症化予防の目的で算定対象を拡大する方向
(b) 舌接触補助床を口腔機能低下症の患者に対しても、咀嚼や嚥下機能の改善を目的として算定対象を拡大する方向
(c) 口腔バイオフィルム感染症の診断を目的とした口腔細菌定量検査の算定対象を無歯顎者にも拡大する方向
(d) 歯科診療所と歯科技工所の間を結ぶためのICTの活用を促進する方向
(e) CAD/CAM冠の適応範囲は、前歯または小臼歯に使用する場合であり、第1大臼歯への使用にはいくつかの条件がついています。一方、「大臼歯のCAD/CAM冠装着歯の予後に、装着部位による統計学的な有意差は認められない」という研究結果もあることから、条件緩和がなされる方向
(f) 臼歯部修復物の生存期間クラウン・ブリッジ維持管理料
金属歯冠修復(4/5冠、メタルクラウン)の5年生存率は約8割にものぼるという報告もあり、同管理料は廃止される可能性が高い。元々、加算的な点数だったことから、金属歯冠修復の多い歯科医院にとっては大きな痛手になると思われる。
(g) 局所麻酔薬の薬剤料の算定について
手術等に伴い麻酔を行なった場合の薬剤料を算定できない処置が多かったが、算定方法が見直される方向で検討されている。
これまで「積極的に動いてもらいたい」「実績を出してほしい」ので様々なインセンティブ(加算等々)をつけていましたが、今後は、「積極的な歯科医院」「実績が出ている歯科医院」にインセンティブがつくようになるのではないかと考えられます。大きな流れは、デジタル化DX化であり、金属修復から非金属修復であり、不定期来院から定期的な来院へと変化していることへの意識改革が重要です。

康本 征史
日本歯科イノベーション協会(JDI) 会長
柏の葉総合歯科・小児歯科 院長
1994年康本歯科クリニック開業。2000年予防歯科センターを増設し、定期管理型歯科医院として業績を伸ばす。各地域での講演会だけでなく、21世紀の歯科医院経営の追求を目的とした「康本塾」「次代塾」を主宰する等、精力的に活動中。

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